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全日本個人総合男子決勝 誰も予想していなかった勝者

2018年4月29日、東京体育館にて全日本個人総合男子決勝が行われた。

 

全日本個人総合2018
会場の器具で練習の最後の詰めを行う選手たち。

 

予選上位が集まる1組には予選トップ通過の白井健三(日体大)を筆頭に予選2位の谷川翔(順天堂大)、昨年の世界選手権代表で予選4位通過した谷川翔の兄、谷川航(同)ら大学生と、それを追いかける内村航平(リンガーハット)。彼らの演技を見逃すわけにはいかない。

 

白井健三
予選トップ通過を果たした白井健三。内村の牙城を崩せるか?

 

その一方で2組から虎視眈々と代表入りを狙う加藤凌平(コナミスポーツ)やベテラン田中佑典(同)も侮れない。それと同時に女子の演技も行われ、会場ではまさに眼がいくつあっても足りない状況が続いた。

 

内村航平のゆか
鉄棒スタートの予選と違い、内村はゆかからスタートの正ローテーション。

 

谷川翔のマンナ
最近では実施する選手も増えたが、以前は谷川翔が日本で唯一の使い手だったマンナ(C)

 

1種目目のゆかでは、いつも通り白井のスタートダッシュが決まったが、ゆかとあん馬を得意とする谷川翔があん馬で14.700の高得点を出し、白井を抜いてトップに躍り出る。内村は予選で落下したあん馬を無事に通すが、全般的に確実性を優先して難度を下げているため、上位との点差は縮まらない。

 

谷川翔のブズナリ
谷川翔はブズナリ(F)の安定感も高い。

 

内村航平のあん馬
予選のミスをしっかり修正して本来のあん馬の演技を見せた内村航平。

 

谷川翔はつり輪でも14点代に乗せ、さらに白井との点差を広げる。次の跳馬では、白井が得意のシライ/キムヒフン(D5.6)で15.000を出すが、谷川翔もまずまずの得点で白井の逆転を許さない。

内村は昨年のリー・シャオペン(D5.8)から難度を大きく落としたシューフェルト(D5.2)をまとめるが、得点は谷川翔よりもやや低く、やはり追い上げることができない。

 

内村航平
鬼門となる5種目目の平行棒を凌いだ内村だが、疲労の色は隠せない。

 

千葉健太の平行棒
平行棒が得意な千葉健太だが、国内のトップ選手のほとんどが平行棒が得意のため15点代を出してもさほど追い上げが効かない。それほど日本の平行棒はレベルが高い。

 

萱和磨の平行棒
萱も平行棒で15点代を出すが、やはり順位には大きく影響しない。

 

谷川翔の平行棒
谷川翔の美しいバブサー(E)

 

次は予選で谷川翔が15点代を出している平行棒だ。谷川翔は決勝でもミスなくまとめ14.866、白井と内村はともに14.500でやはり追いつけない。

この時点でトップの谷川翔と白井の得点差は0.465、内村との得点差は1.333。谷川翔は鉄棒はさほど得意ではないが、白井もそれほど得点力がある種目ではない。内村は鉄棒が得意だが、1点以上の差を追い上げるのは容易ではない。

 

谷川航の鉄棒
跳び越し系のはなれ技を得意とする谷川航だが、モズニク(E)で片手が外れるミスが出てしまった。

 

内村航平の鉄棒
鉄棒の演技を無事に終えた内村だが、表情は今ひとつ晴れない。

 

同じ組の千葉健太(順天堂大)や谷川航がミスを出す中、内村は屈伸コバチ(E)、カッシーナ(G)、コールマン(E)と大技を畳み掛け、1組で最高得点の14.733を叩き出す。

 

谷川翔の鉄棒
けして得意種目ではないが、体線が美しい谷川翔の鉄棒

 

谷川翔の鉄棒が終わると、電光掲示板には総合得点の後に暫定1位を示す(1)の文字が。ここで内村の連覇は途絶えた。最終演技者の白井健三が全てのはなれ技を決め、さらに着地を止めるが、総合得点の後に表示されたのは(2)。谷川翔の初優勝が決まった瞬間だった。

 

白井健三の鉄棒
着地まで決めた白井だが、トップには追いつけなかった。

 

谷川兄弟
兄、谷川航と握手を交わす谷川翔

 

テレビカメラは慌てて選手の間に割り込むようにして谷川翔の顔を捉え、記者席は意外な優勝者にざわつき始める。内村の11連覇を阻むのは白井健三と誰もが思い込んでいた。だが、それを成し遂げたのは、記者陣も知らないさらに下の世代だった。大学2年生の谷川翔はまさに2020年東京オリンピックへの旗手となるだろう。

 

谷川翔
優勝会見後に記者団に囲まれる谷川翔

 

今年の世界選手権の代表選考は、この個人総合予選/決勝、NHK杯の3大会の合計点で争われ、上位2名が代表に決定する。内村、白井の世代間闘争にさらにその下の谷川翔が加わった。内村は予選でこそあん馬の落下で順位を下げたものの、決勝だけの得点ならトップという事実も忘れてはならない。

5月20日に行われるNHK杯の順位争いは、さらに熾烈なものになるだろう。

 

全日本個人総合男子表彰台
この3人から世界選手権代表が決まるのか?

 

TEXT : Masaru “TAROKEN” Maeda

About taroken

GymnasticsNews Radio Showのメインパーソナリティ、ライター。 学生時代に体操の選手の経験あり。体操ファン歴は中学生時代から。 静岡県体操協会男子2種審判資格あり。 ポッドキャスターとしては体操の他、Apple製品、IT関連、鉄道系の番組にも出演中。

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