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導かれし”道”の先に・・・:亀山耕平選手ロングインタビューVol.1

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世界選手権初出場ながら、あん馬の種目で金メダルを獲得。これは2003年の鹿島丈博以来2人目の快挙だ。
15.833の高得点をたたき出し、初出場とは思えないほど落ち着いた印象を受けたが、金メダルへの自信はなかったのだという。
では彼を頂点へと導いたものとはいったいなんだったのか。確実に世界にその名を知らしめた亀山耕平の本音に迫る。

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正しい方向で努力をしてきた

――世界選手権での金メダルおめでとうございます!

亀山 ありがとうございます。日の丸を背負って世界で活躍するっていうことが一つの夢だったので、それがかなったかな、と。

――大会前には自信はどの程度あったのでしょう。

亀山 自信は……結構聞かれるんですけど、僕はなかったんですよ。会場で手を上げた時に通るか、ちゃんと自分の演技ができるか、というところに自信はなかったです。

――金メダルとまではいかなくても、メダルを取るという点ではどうだったのでしょう。

亀山 メダルは、ちゃんとやったら取れるかなと。あん馬においての才能は誰にも負けていないはずだ、世界屈指のはずだから、ちゃんと磨いたらいける、とは思っていました。そして正しい方向で努力してきたということに関しては自信があったので。

――自分を信じられるかどうか。

亀山 そうですね。でも努力とかではなくてどっちかっていうと“磨いた”という表現の方が正しいと思います。

――というと?

亀山 う~ん。「オレ努力した!」っていう感じよりも、徹底的に自分の持っているものを磨いていったっていう試合でした。今回は。

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――日の丸に対する思い、代表に対する思いは強かったと思います。

亀山 そうですね。社会人になって、ここでやる意味というのはやっぱり代表に入るしかないんですよ。活躍することによって、会社の方も喜んでくれるので、代表に入れない期間は一番つまらないですし、意味がないことはないにしても……。

――でもやっぱりモチベーションが保ちにくい?

亀山 そういった悔しさをバネにする人もいますし、人それぞれだとは思います。でも徳洲会の選手は代表を狙っていますし、社会人の選手はみんなそのためにやっていますから。この年までできるというのもなかなか貴重な体験です。

――今年で25歳ですが体操競技では中堅くらいになるのでしょうか。

亀山 中堅くらいですね。だんだん体が重くなってくるだとか、反応が悪くなったりはしてきていますよ。あとは見た目が変わってくるんだと思います。やっぱり大学生のときの動きの方が軽そう、ということはありますね。

――そうなんですね。自分の中ではそういった変化を感じた時はあったのでしょうか?

亀山 急にはないです。徐々に、ですね。まあでも一番練習できているのも今なんですよ、実は。学生の時って勢いで「いっちゃえ!」みたいなところがあるんですけど、それがだんだんなくなってきて。どちらかというと、練習したことが試合で出せるといいますか、頭と体が一致してくる年齢がたぶん今くらいなんですよね。

――頭と体が一致する感覚みたいなものがある。

亀山 はい。だんだん一致し始めてくるその入り口くらいが25~27歳くらいだと言われます。そのあたりが一番体も動きます。

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――なるほど。亀山選手の演技を見ているとつま先まで神経がいっている印象を受けますが、そういったことも関係しているのでしょうか。

亀山 僕はもともとつま先がやわらかいので、演技中はそんなに意識はしていません。積み重ねてきた練習がそうなっていくのだと思います。

――普段からあん馬の動きをしているんじゃないか!?と思うほど自然です。

亀山 普段あのような動きをすることはありませんが(笑)滑らかにしようという意識はあんまりないんです。そういった、勝手になる体操、というのが、人それぞれの持ち味になってくると思うんですよね。だからその「滑らか」とか、「足先がキレイ」っていうのはたぶん僕特有の、勝手に出てくるものなので意識はしていないです。

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代表になれた喜びと 日の丸の重み

――今大会も含めて、試合の際に披露する構成というのは、練習の段階ではどれくらいの完成度なのでしょう。成功率はどれくらい?

亀山 成功率はほぼ100%にもっていきます。

――それでもうまくいかないこともある。

亀山 そういうこともあるんですよね。それはたぶん練習が間違っていたんだということ。そこに原因があるんだと思います。ただ試合の時にはその成功率とは別に、出来高という考え方もあります。できが良い、悪い、だけではなく一応最後までは“とおった”、といったような。

――成功の中にも段階がある。

亀山 そういったことを含めての100%ということですね。やっぱりあん馬に関しては落ちないことが大前提なので、完璧にやろうとすると落ちちゃったりするんです。だからそこをうまく修正しながら詰めていく。

――完璧にやろうとするほどうまくいかない?

亀山 そうなんですよ。ちょっと気に入らないところがあるとイラッとしてその瞬間にそこに囚われちゃうんです。

――それは演技中にイラッとしているんですか?

亀山 はい。だからそれよりも優先順位は「落ちない」こと。そのあとに、完璧が出てくるかもしれない、みたいな感覚ですね。

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――なるほど。そういった意識なんですね。

亀山 通さないときに個々の技で完璧を目指す、というやり方で今回は挑戦しました。

――以前のインタビューで、様々なやり方を試していると話されていました。今回のやり方は成功したわけですね。

亀山 そうですね。はい。

――あん馬は体操競技の中でもものすごくデリケートな種目です。

亀山 そうですね。落ちることが多いから・・・・。

――落下をしてしまうと、演技の2~3分弱の中でリカバリーをしようにもなかなか厳しい。その中でどういったことを考えながら演技をしているのでしょう。

亀山 もう、暗示です。自己暗示。『できるできる、大丈夫大丈夫、できる』といった感じです。

――演技中はそのように考えているんですね。

亀山 はい。ちょっと気を抜くと落ちたくなるんですよ。怖いから。

――怖いんですか!?

亀山 めちゃめちゃ怖いです。日の丸を背負って戦うっていう責任感というか重圧というのはものすごいものがあります。失敗して帰ったら『何やってんだ』ってなるじゃないですか。そういう部分も怖いですし。よく言う、「プレッシャーに押しつぶされる」というのは多分そういうことなんだと思うんですよね。

――それが日の丸の、代表の重みなんですね。特に体操界は結果を残し続けていますから。そういった歴史を次の代次の代に繋いで今にきていますので、その重みは着てみないと分からないでしょうね。

亀山 そうですね。僕は予選の時に『すげー。試合着に日の丸ついてる!』って感動しました。『オレ着てる。これで戦うんだ』って。今までも何回か日本代表として国際大会に出場したことはありますが、世界選手権、オリンピックっていう一番大きい大会の代表は初めてだったので。『ほんとに自分か!?』と感動しました。

――体操選手にとって世界選手権というのはオリンピックに次いでか同じくらいの意味で重要なんですね。それはうれしさもあるでしょうね。

亀山 はい。それはもう、やっぱりそうです。

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――体操競技では予選と本選の2日間ですべてが決まります。朝起きて演技をやってみて「ちょっと重いな」って日もあるのではないかと思いますが特別な調整法などはあるのでしょうか。

亀山 いや、特にそういったことはないです。重くてもできますから。特に今回(世界選手権)は一種目だったので。

――そこは大丈夫だ、という自信がある。

亀山 はい。まあ練習の時でも重い日はあったし、といった感じで。あまり重いとか軽いとかっていう感覚はないですね。いつも一緒。ほぼ一緒。たぶん、鈍感な部分もあるんだと思いますけどね(笑)

――なるほど(笑)。初めての世界選手権ということでした。亀山選手は集中をしすぎても良くないと言っていましたが、予選から集中はできていたのでしょうか?

亀山 そうですね。集中は持続ができないので。だいたい僕は手を上げる前の前の演技者が終わったあたりから集中し始めていますね。

――それまでは比較的リラックスでいよう、と。

亀山 あんまりできていないときもあるんですけど、なるべくリラックスしたい。その中で周りに惑わされないことも大事になってきます。試合会場にはうまい選手がいっぱいいますし、器具に飛びつきたいときにも人が多くて自分のタイミングで行けなかったりするんですよ。そういうのに苛立ちがあったりするので、そういうこともちゃんと考えて、『飛びつけなかったー。とか、この種目は入れなかった』というのに囚われずに、自分のことを淡々とやっていくことに集中します。そして演技の時にまた集中する、といった感じですね。集中しないでアップ時間を過ごす、みたいな。

――そのくらいの気持ちの持ち方がいいと。

亀山 その方が僕は、合ってますね。

――その2日間は自分が、精神も含めてしっかりコントロールできないと、やっぱりちょっと辛いんでしょうね。

亀山 そうですね。ホテルにいるときなどはいつも通りの生活をしていますよ。そこから会場にいって、試合までの間はほとんどリラックスをしていたいです。

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――リラックスの方法などはありますか?

亀山 会場へ出発する前に音楽を聞きます。ホテルを出るちょっと前ですね。例えば聞きたい曲が6曲あるとしたらその6曲の合計を一度計算します。世界選手権の時は28分だったんですよ。なので出発の28分前に音楽をかけ、それを聞いてから出発していました。

――なるほど。では出発前に聞く曲が決まっているのですね。

亀山 はい。その都度作っています。

――そうやって気持ちをコントロールしていくのはすごいことです。普通は出来ないですよ。そこまで。

亀山 いやいや、でも試合の時だけです。そういうことをやるのは。

――しかし、ほんとにあん馬だけは真似をしようと思っても絶対にできない種目ですよね。完璧に訓練していないと。2本の手で回っていく感覚が分からない。

亀山 体操は練習していないとできないですね。簡単に手をつけられないですから。そこが長所であって短所でもあります。野球とかサッカーっていうメジャーなスポーツは手をつけやすいから親しまれやすい。

――うまい下手はあるけど、とりあえずはできますよね。

亀山 体操はそういうのがないから、もっと有名になりたいんですけどね。

――でも、今回でずいぶん変わったのでは?

亀山 僕自身の環境は少し変わるかなという感じはしています。

――会場にはお母さんの姿も見られました。

亀山 はい。親孝行ができましたね。

【次回に続く】

[Interviewer:Gouji “BJ” Hamakawa TEXT:Chiharu Abe Photo:sohta kitazawa]

About hamabo

GymnasticNewsの編集人&発起人。元々はサイクルロードレースの取材をしていたが、タロケン&chiharuの”体操愛”に感化され体操を見るようになった体操素人。素人ならではの目線を大切に現在"体操"を勉強中。

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