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異次元への挑戦2:男子跳馬種目別

これまで見た3回宙返りの中で一番驚いたのは大学の頃。

どこかの体育館の片隅で、ごく内輪の宴会のような雰囲気で行われた大会の審判をやらされていた時に、東京の大学帰りという選手が行った鉄棒の3回宙だった。

こんな誰も知らない小さな大会で3回宙が飛び出すとは思ってもみなかった。

 

体操競技で初めて3回宙返りを行ったのは旧ソ連の故ニコライ・アンドリアノフである。1974年に鉄棒で発表された。その後、つり輪、ゆか、跳馬でも行われるようになり、屈伸やひねりを加えたものまで出てきた。

それでも4回宙は出なかった。旧ソ連だったかロシアだったか、鉄棒の4回宙返りを練習しているという話を遠藤幸雄さん(故人)のテレビ解説で聞いた覚えはあるが、日の目を見なかったようだ。

さすがに4回宙は漫画・ガンバ!Fly highの世界の中だけの話だろうと思って油断していたら、リオ五輪で出てしまった。しかも跳馬である。

実施したのはイーゴリ・ラディビロフ(ウクライナ)。種目別跳馬で「前転とび前方かかえ込み3回宙返り」を尻餅をつきながらもギリギリで成功させD7.0の跳躍として認められた。跳馬では手を突いてから身体が起き上がってくるまでの半回転を宙返り1回目と見なすので、前転とび+3回宙で4回宙返りとなる。

おそらく「ラディビロフ」の名が付くだろう。

オリンピックや世界選手権などの世界トップの大会で4回宙返りを成功させたのは男女通じて史上初めてで、体操の新しい扉が開かれた瞬間である。3回宙から4回宙までのたった1回転に40年かかった。今の体操はそれくらい極限まで高難度化が進んでいる。

なおD7.0は男子跳馬では初めてであり、現時点で最高のDスコアとなる。女子ではプロドノワ(3回宙)がD7.0となっているので、男子が女子に追いついたことになる。

シライ/キムヒフン
白井健三がこれまで行っていたシライ/キムヒフンにさらに半分(180度)ひねりを加えたのが新技である。

 

また男子種目別跳馬ではもう一つの新技が発表された。我らが白井健三が行った「ロンダート後転跳び後方伸身宙返り3回半ひねり(ユルチェンコ3回半ひねり;D6.4)」である。

これは片足1歩のミスに止めた見事な実施だった。もちろん跳馬のシライ2となるだろう。シライの名前が付く技はこれで5個目となり、シライと並んでこれまでの最多記録4個だった「ヤマワキ」を抜いて単独トップに躍り出た。おそらくこれは当分の間、抜かれることはないだろう。

異次元への扉は急に開かれるものである。

 

TEXT : Masaru “TAROKEN” Maeda

About taroken

GymnasticsNews Radio Showのメインパーソナリティ、ライター。 学生時代に体操の選手の経験あり。体操ファン歴は中学生時代から。 静岡県体操協会男子3種審判資格あり。 ポッドキャスターとしては体操の他、Apple製品、IT関連、鉄道系の番組にも出演中。

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