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【コラム】 王者の背中を押すもの

植松鉱治
植松鉱治

初めてのタイトルには悔しさが伴った。

植松鉱治(KONAMI)は全日本種目別選手権の鉄棒で、16.050で自身初となる優勝を果たした。しかし、世界選手権の出場を果たすにはこの大会で派遣標準得点(鉄棒の場合は16.300)も同時にクリアしなければならない。派遣標準得点には0.25点届かなかった。

約1カ月前に行われたNHK杯で世界選手権の代表を決めることができなかったため、残された道は1つ。『(16.300を出すための)新しい技はもう練習している。今回は間に合わなかったけど種目別選手権には合わせる』試合後にもかかわらず安堵の表情すら見せず、植松は言った。『鉄棒で狙えるのは日本で俺だけやからな』

現在、国内で鉄棒の種目において16点以上をコンスタントに出せるのは植松しかいない。自信はあった。しかし演技を終えた時「この演技では16.300は出ない」そう感じたのかもしれない。スペシャリストだからこそ、その得点を出すむずかしさ、それに見合う演技がどんなものなのかが分かっている。

7236『仕方ないなと。納得した部分はありました』試合後に話した植松はすでに未来を見つめていた。『やっととれたタイトルなので今後の大会でもずっと1番でいけるように努力していきたい』

だが、改めて感じた喜びもあった。演技中、そして着地を決め瞬間に観客席からあふれてくる拍手と歓声、そして笑顔。『応援してくれている人がたくさんいるのは演技をしていても分かるので、それにともなうような結果を残せるように頑張っていきたい』

信念がある。〝見ていて楽しいと思ってもらえるような演技がしたい〟。その歓声が、笑顔が植松の背中を押し、喜びとなる。王者のスタートラインに立った。挑戦は続く。

TEXT : CHIHARU ABE

About chiharu

駆け出しスポーツライターとして某野球雑誌を中心に活躍中。大学時代に体操競技に携わり、それ以来、”体操愛”に目覚める。独自の人脈で”体操”に関する様々な情報を収集する。

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