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金メダルをお待たせ。

「4年前が一番メダルが取れるって言われてたんですよ」ミックスゾーンで記者団を前に村上茉愛(日体大)が笑顔で語る。

 

村上茉愛

 

4年前とは村上が初めて世界選手権に出場した2013年のアントワープ大会のことだ。あの時は前年の全日本種目別ゆかで優勝し、当時は世界的にもできる選手が少なかったH難度のシリバス(後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり)を軽々とこなす日本女子選手として脚光と周囲の期待を浴びていた。

世界選手権の種目別決勝ではノーミスの演技だったが結果は4位。観客からはブーイングが上がったが、その上位にいるのはシモーネ・バイルズ(アメリカ)、バネッサ・フェラーリ(イタリア)、ラリサ・ヨルダケ(ルーマニア)という名だたる世界のトップ選手たち。村上は世界戦初デビューでまだ世界では認められていなかったのだ。

 

村上茉愛

 

その翌年の南寧世界選手権では得意のシリバスで崩れ予選敗退、ゆかの決勝には残れなかった。日体大に進学した2015年の春には調子を崩しており、グラスゴー世界選手権の代表に入れずかろうじて第2補欠になった。

しかし他の選手たちに次々と故障が起こり、練習の様子から正選手の内山由綺(スマイル体操クラブ)との交代が告げられ、思いがけず世界選手権に出場することになる。

 

村上茉愛

 

ゆかの予選ではH難度を入れられず予選敗退となったが、個人総合では予選を通過した。そこから村上の快進撃が始まる。周囲にミスが目立つ中、ノーミスで4種目を通し個人総合6位という結果に周囲も目を丸くした。もっとも村上本人にとっては意外でもなかったようで、当時は「もう少し頑張れば5位もいけたかな」と語っている。

 

村上茉愛

 

2016年のリオ五輪には正代表に復帰。しゃがみ立ち2回ターンでバランスを崩し、種目別ゆかは7位に終わったが、団体総合では3種目で演技をし団体4位に貢献する。

そして迎えた今年のモントリオール世界選手権。個人総合は平均台の落下で4位となったが、その後のゆかの演技は会心の出来で、それが2日後の種目別ゆかへの布石となった。

 

村上茉愛

 

ここでメダルを取れなかったら日本に帰れない、そう思うと個人総合が終わってからの2日間がすごく怖かった。何色でもいいからメダルを取りたい。ゆかの前に行われた種目別平均台を無事に通し自信を取り戻すと、ゆかで最初の4回ターンが鮮やかに決まったところで調子に乗った。4年前は技だけだった自分だが、曲を変え、表現力も兼ね備え、手足を伸ばして大人っぽく見せるテクニックもある。全身を操ってメダルを狙いにいった。

 

村上茉愛

 

4つの着地の内3つをピタリと止めた。あとは他の選手の演技を待つだけだ。誰も村上の得点を超えられないまま、最終演技者を迎えた。そこに立っていたのは4年前に村上よりも上位にいたバネッサ・フェラーリだった。

しかしフェラーリに思いがけずアクシデントが起こる。2本目の着地で頭が低くなり、顔からゆかに崩れ落ちた。そのまま動けず演技が中断し、フェラーリは退場。4年前には取れなかった金メダルが、やっと村上の元にやって来た。

 

村上茉愛

 

メダルは自分にとって成長の証、この大会でメダルが取れなかったらもうメダルは無理だったろうと語る村上。

 

これまで自分を支え、応援してくれた母親に、村上は金メダルを見せながらこう言った。

「お待たせしました」

 

村上茉愛

 

Text : Masaru “TAROKEN” Maeda

About taroken

GymnasticsNews Radio Showのメインパーソナリティ、ライター。
学生時代に体操の選手の経験あり。体操ファン歴は中学生時代から。
静岡県体操協会男子3種審判資格あり。
ポッドキャスターとしては体操の他、Apple製品、IT関連、鉄道系の番組にも出演中。

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