Home / Column

Column

体操競技や選手に関わるコラムを更新していきます。

宮地の一歩

鉄棒に臨む宮地秀享

「嬉しさは全くないですね。悔しいというか自分に腹立たしいという気持ちしかないです。」 世界選手権の種目別決勝が終わった後のミックスゾーンで、宮地秀享(茗渓クラブ)は記者団にその気持ちをぶつけた。     大舞台で世界で初めて伸身ブレットシュナイダー(I)を成功させ、この技に「MIYACHI」の名が付くことが確実視されるが、それよりも次のかかえ込みブレットシュナイダー(H)で落下し、金メダルを逃したことが大きかった。 「申し訳なさすぎて。何してきたんだという話ですね。」     日頃は茗渓クラブの一員として国内の大会に参加しているが、団体で大会に参加するこ …

Read More »

金メダルをお待たせ。

村上茉愛

「4年前が一番メダルが取れるって言われてたんですよ」ミックスゾーンで記者団を前に村上茉愛(日体大)が笑顔で語る。     4年前とは村上が初めて世界選手権に出場した2013年のアントワープ大会のことだ。あの時は前年の全日本種目別ゆかで優勝し、当時は世界的にもできる選手が少なかったH難度のシリバス(後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり)を軽々とこなす日本女子選手として脚光と周囲の期待を浴びていた。 世界選手権の種目別決勝ではノーミスの演技だったが結果は4位。観客からはブーイングが上がったが、その上位にいるのはシモーネ・バイルズ(アメリカ)、バネッサ・フェラーリ(イタリア)、ラリ …

Read More »

なぜ宮地秀享は内村航平に勝てなかったのか?

宮地秀享

2017年6月25日に高崎アリーナで行われた全日本種目別選手権の男子決勝は、近年稀にみる白熱した戦いとなった。     あん馬ではギリギリで予選を通過した杉野正尭(鹿屋体育大)がまさかの初優勝。平行棒では「名手の家系」と言われながら、これまで種目別のタイトルを取れなかったロンドン五輪、リオ五輪代表の田中佑典(コナミスポーツ)が芸術的とも言える実施で種目別初優勝を果たした。 しかしながら種目別選手権の真骨頂はここからだった。     最終種目の鉄棒は世界でも類を見ない大技の応酬となった。決勝進出者8人のうち実に5人が世界的にも珍しいはなれ技を繰り出したので …

Read More »

内村圧勝の陰に潜む危機感と希望

NHK杯は内村航平(リンガーハット)の9連覇で幕を閉じた。体調が万全ではなく、全体的に難度を下げて臨みながらも、ミスのない演技で連覇を果たしたその姿は、まさしく王者だった。2位、白井健三(日体大)との差はわずかに0.350。だが、「小さな点差の中に大きな壁を感じている」という白井の言葉どおり、内村と白井の間には簡単には埋まらない差があるように感じた。また、3位、田中佑典(コナミスポーツ体操競技部)と白井との差が0.750。田中佑がミスのない演技をしていれば、この順位は変わっていたのではないかとも思える。2位以下の選手たちは、1つ1つのミスが命取りとなるが、内村に関しては自身の持つ技を出すことが …

Read More »

新世代の挑戦

全日本個人総合で開幕した2017年の日本体操界。 男子はプロ転向後初の試合となる内村航平(リンガーハット)の10連覇が注目を集めたが、女子では新世代の台頭が著しい。 中でも今年度から高校2年生になった梶田凪(山梨ジュニア体操クラブ)、中路紫帆(戸田市スポーツセンター)、花島なつみ(フジスポーツ/東京学館)の高2トリオが目を引く。         梶田凪は和風の面立ちと美しい体線を武器に、すでにトップ選手のムードを醸し出す。 中路紫帆は高校生らしかぬ、すらっとしたシルエットと大人っぽい雰囲気が魅力だ。 花島なつみは4種目でのバランスの取れた得点力と、他の選 …

Read More »

内村の10連覇を阻もうとした大学生四銃士

千葉健太 鉄棒

「4人がかりでも上2人を倒せなかったですね」 全日本個人総合決勝が終わった後、ミックスゾーンで谷川航(順天堂大)はこう話していた。 上2人とは1位の内村航平(リンガーハット)と田中佑典(コナミスポーツ)、4人とは内村・田中と同じ1組で回った白井健三、萱和磨、谷川航、千葉健太の大学生4人のことである。         白井健三はもはや体操界のみならず一般のお茶の間でも知られた存在で、昨年のリオデジャネイロ・オリンピックを始め数多くの世界の舞台で活躍している。自身の名前がつく技を世界一多く持っている。 萱和磨は2015年世界選手権代表にもなり、種目別あん馬で …

Read More »

王者の風格 〜 クリスチャン・ベルキ

王者ベルキ (berki krisztián)

全ての観客と選手及び関係者、報道陣が見つめる中、王者ベルキは雄大な開脚スイングから演技を開始した。       最初のセア倒立で片手がポメルから落ちてしまったが、落ち着いて戻し、振り下ろして身体を回し始める。     クリスチャン・ベルキは身長178cm。体操のトップ選手としては異例の体格ながら、2010年から2012年と2014年のオリンピック及び世界選手権で4度あん馬の金メダルに輝いている。 2015年の肩の手術後しばらくトップ戦線から離れていたが、やっと我々の前に戻ってきてくれた。     ベルキのあん馬はその長い手足 …

Read More »

決意 〜 リオ五輪団体金への道のり 決勝編

田中佑典

演技の直前、田中佑典はふと視線を右上にやった。まるで天井の向こうにある太陽に目をやったかのようにも見えた。あるいは田中には別の何かが見えていたのかもしれない。 平行棒を両手で掴み、何百回も繰り返した動きで倒立に持ち込む。これから、というその時、田中にしては珍しくバーを握り直した。ルールではこれで0.1の減点である。それを承知での握り直しに、わたしはこれまでとは違う何かを感じていた。     仕事と私用の忙しさもあったが、早朝からの男子団体決勝を生で見ようというモチベーションを失っていたわたしは、午後になって Yahoo Japan! のニュースで日本が金メダルに輝いたことを …

Read More »

30歳の再チャレンジ

ママジムナスト

16歳で全日本個人総合初優勝、史上3人目のNHK杯4連覇、2004年アテネオリンピック出場。このような輝かしい戦績を残しつつ、2009年の国体を最後に石坂真奈美は現役引退を表明した。石坂のNHK杯5連覇を阻止したのは後輩の鶴見虹子だった。     朝日生命で指導をしながら、2年ほど前から漠然と選手復帰は考えていた。背中を押したのは「ママはどうして試合に出ないの?」という6歳の息子の言葉だった。 東京で全日本シニア選手権が行われることを知り、それならばと7年ぶりに練習を再開したのは4ヶ月前のこと。仕事と両立させながらの練習は週に2〜3日、1度の練習で2時間が体力の限界だった。 …

Read More »

くずれた方程式 〜 リオ五輪団体金への道のり 予選編

加藤凌平のつり輪

わたしは宿泊先のホテルでふてくされたようにベッドに身を投げると、気持ちをねじ伏せるようにして眠りについた。起床予定は5時。すでに1時を過ぎていた。 リオ五輪男子団体予選で日本は4位通過というまさかの結果に終わった。 思い返せば予兆はあった。会場での通し練習で内村がゆかで背中から落ちる大過失。跳馬でも着地のミスがあり審判に好印象は残せなかった。山室はあん馬で、田中佑典も得意のはずの平行棒で落下。お世辞にも好調とは言えなかった。   それでもわたしは楽観視していた。国内の代表選考という厳しい戦いをくぐり抜けてきた4人と、それを率いる内村航平は、オリンピック本番では実力を発揮してくれると思 …

Read More »