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折れぬ心

2018年4月14日に東京体育館で行われたワールドカップ東京大会で、ちょっとした事故が発生した。カナダのジャクソン・ペインがゆかの演技中に、足を負傷したのだ。

ゆかのシリーズの2本目、宙返りの連続で2個目の宙返りの蹴りが斜めの方向に。足から着地したものの、そこで演技は中断。痛そうな足を引きずりながら、スタッフに身体を支えられてポディウムを降りた。ああこの後の演技は無理だ、会場の誰もがそう思った。まだ6種目中1種目が始まったばかりである。

次のあん馬では自分の足で歩き、演技に入ったが、やはり足の痛みが影響するのかウーゴニアン(E)がうまくいかない。3回落下したが、何とかこなして最後まで演技を終えた。落ちても落ちても諦めないその姿に、観客は国を越えて拍手を送った。

不安定ながらつり輪もこなした。着地は足への負担が大きいため、難度を落として演技した。

そして次は跳馬である。これはさすがに無理だろう。案の定、助走開始地点よりも跳馬よりの、審判団の近くで待っている。棄権か演技せず0点にするのだろう。誰もがそう思った。

 

ジャクソン・ペイン Jackson Payne
足を負傷しながらも跳馬を転回で跳んだ。

 

ところがジャクソン・ペインはその位置で手を上げて助走に入る。もしや、と思った瞬間、両手で跳馬を突き放すと半回転して着地。転回(前転とび)だ。体操の初心者が最初に覚える基本技でDスコアは最低の1.6。ワールドカップに出場するようなトップ選手が行う技ではない。

しかし、転回でもいいから、とにかく全種目を演技しよう、その気概は会場内に伝わった。また大きな拍手に包まれた。

 

足が心配だったが、何とか着地は成功した。

 

この後、下り技の難度を落として平行棒を演技し、最後の鉄棒ではシュタルダートカチェフ(D)で落下したものの、演技を続けた。最後は足への負担を考慮して下り技はせず、鉄棒にぶら下がった状態で手を離して下りた。

 

ジャクソン・ペイン
落下しながらも6種目目の鉄棒までやりきった。

 

全6種目を終えたジャクソンには、惜しみ無い拍手が送られた。

熱い戦いが繰り広げられた東京体育館が、その時だけは春の暖かい空気に包まれた気がした。

 

TEXT : Masaru “TAROKEN” Maeda

About taroken

タロケン:GymnasticsNews Radio Showのメインパーソナリティ、ライター。 学生時代に体操の選手の経験あり。体操ファン歴は中学生時代から。 静岡県体操協会男子2種審判資格あり。 ポッドキャスターとしては体操の他、Apple製品、IT関連、鉄道系の番組にも出演中。HP:タロケン.link

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